当事務所は、居心地よい空間を作り出すために、写真に写る視覚的な美しさだけでなく、温かさや涼しさなどの温熱環境をデザインすることも大切だと考えています。
そこで、今回は当事務所の断熱への取り組みをご紹介したいと思います。
昨今、高断熱・高気密が重要だと言われていますが、言葉ではわかるけど、具体的にどういうことかイメージするのはなかなか難しいのではないでしょうか。
魔法瓶の水筒をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
魔法瓶に暖かい飲み物や冷たい飲み物を入れておくと、長い時間その状態を保っておけます。高断熱・高気密の建物も同じで、エアコンで少し室内を温めたり、冷やしてあげると、長くその状態を保っておくことができるのです。
では、魔法瓶の水筒の蓋を開けていたらどうでしょうか。
当然ですが、冷めたり、ぬるくなったりのは早いです。
建築も同じです。壁などをどれだけ断熱をしても、どこか隙間が空いていたり、断熱が弱いところがあるとそこからどんどん熱が逃げていきます。お風呂の排水口から水を抜いているようなイメージです。
わかりやすいところでは、窓は熱が逃げていきやすい弱点となります。魔法瓶があれだけ厚い外皮を持っていることを考えると、薄いガラスだけで断熱性能を高めるのはとても難しいとご理解いただけると思います。つまり、断熱に配慮していない昔のサッシやシングルガラス、隙間のある木製窓からは熱が逃げていきやすいということになります。
わかりにくいところでは、施工上生じる隙間、床・壁・屋根の取合部、軒天、1階床、熱橋部などの設計者や施工者によって見落とされがちな部分が挙げられます。このような施工しにくいところ、モノ同士が取り合うところなどで、断熱が切れてしまいがちです。見落とされがちな理由は、設計者や実際に工事をする職人さんも含め、断熱について深く理解していない、重要視していないことが多いと思います。こういった部分をフォローすることは、デザイン的にも難しくなりますし、施工上も面倒ですし、コストも上がってしまします。
設計者の立場からしますと、実はこのような断熱性能を高めることとデザイン性を両立することは、大変難しいことなんです。例えば複層ガラスやLow-Eガラスを使用すると、ガラスの透明感は減退します。木製サッシもかっこいいですが、十分に対策を施さないと隙間風が入ってきます。取合いなどの施工しにくい部分も施工できるような設計をしておこうと思うと、シンプルですっきりとしたデザインを保つことが難しくなります。また、これらの対策をすると、見た目はほとんど変わりませんが、コストは上がります。
私たちは、心地よい空間を作り出すためには、これらを両立していくことがとても大切だと考え、我々は、窓などの弱点を可能な限り補強する、断熱の切れ目を作らないよう、設計そして現場監理をしています。
竣工後の「この家、あったかい! エアコンもほとんどいらない」という言葉はとても嬉しいです。
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