そこに育った樹木や草花も引っこ抜き、素晴らしい庭石なんかも全て撤去。力強い構造体の柱や繊細な建具も全て捨ててしまう。そしてゼロからスタート。何かこういうことに違和感を感じていました。そして、プロジェクトの相談があった時、リノベーションの可能性もあるんじゃないかとと思ってしまいます。建築家だから新しい空間に挑みたいはずなのにと、矛盾や違和感を抱えてここ3、4年を送っていましたが、前職の同期からサーキュラーエコノミーという考え方を教えてもらいました!
製品を製造・販売し、使い終わったら廃棄する、一方通行の「リニア・エコノミー(直線型経済)」に対して、廃棄物や汚染を最小化し、再生資源を活用し、製品と原料を使い続けることを前提とした「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」です。
事務所のある兵庫県の仁川は住宅地でして、周りを見渡してみると大きな邸宅が次々と取り壊され、小さく分割され、売りに出されたり、建売住宅が立っていっています。その過程で、一旦、何もない更地にされてしまい、美しい石垣や樹木、そして選び抜かれたであろう建材も全て捨てられてしまうのです。街を彩っていた美しい風景や記憶が壊されていくという勿体無さと、大切に使われ時間が経つほど輝きを増すはずの建材や植物が失われる勿体無さを感じなからショベルカーでたった数日で奪われているリニア・エコノミーの象徴とも言える光景を無力に見ています。ちなみに勿体無いは「MOTAINAI」と英語になり、日本のモノを大切にし、何度も再利用する文化に敬意が払われ、資源を有効活用する際のキャッチフレーズになっているそうです。
こんな中で一設計事務所にできることは限られていますが、地球という限られた資源の環境に人の住処に創り出すものとして、サーキュラーエコノミーに大変共感する部分があり、背伸びせず、できることから始めていきたいと思います!
美しいもの、時が経つほどに輝きが増すもの、永く愛してもらえるもの、既に存在する美しさや尊さを活用したものを意識的にご提案していければと思っています。
これまでのプロジェクトの中でも、オセロハウスでの自然素材の多用や庭石の再利用、隣のご両親宅を含めた将来的な活用のご提案、大阪メトロ動物園前駅の既存タイルの活用、CAVEやひふみstepsなどのリノベーション、自然素材だけでできたIDENTITYシリーズなどはこの考え方の上にあることだと思います。
アップルが「地球から何も取らずの製品を作る」と掲げていますが、建築に当てはめてみると「地球上から何も取らずの建築を作る」。もしかすると、法隆寺などの昔の建築は、再生可能な資源である自然素材だけでできており、まさに循環型の建築「サーキュラー建築」だったのかもしれません。
こんな考え方を深く共有できるクライアントと、新しいのか、古いのかよくわからない建築、現代版の 「サーキュラー建築」をいつか作ってみたいと思いを馳せています。
参考書籍:「サーキュラー・エコノミー」中石和良著 ポプラ新書 2020
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